Last update on 2011/9/22
今本棚を眺めながら
結局臨床研修に必要な本ってなんだろうと思って書いてみる。
気づいたら適宜付け足します。
結局2年間終わってみると、
本で学べることは限られている。 というのが感想。月並みだけれども本での疑似体験は所詮疑似体験で実際の体験なしには身につかない。
嘔吐、上腹部痛で来てかなり具合が悪そうだったけど、急性胃炎と(ゴミ箱診断なんだけど)翌々日に虫垂炎で戻ってくる。高齢者で胸になんか違和感があるとだけいい、痛いとか言わなかった人が実は急性心筋梗塞だったりする。なんかお腹全体が痛い感じがする…と言っていた人が造影CTを撮ってみると腸間膜動脈解離だったりする。
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# 先輩から受け継いだや見聞きしたメモ
どんなにqualityの高い服でも体にジャストフィットするわけではないのと同様で結局はどの本も多かれ少なかれ「うちとは違う!」というところがあるはず。
郷に入っては郷に従えというように結局はそのところでのしきたりに任せるのが一番良い。
例:心肺停止患者のCPRは30分で終了する(確か20分くらい継続するとその後の蘇生確率がほとんど見込めないとかだったかな?)など。
# 当直医マニュアル〈2010〉(年度版)・外来診療マニュアル<第2版>
結局はこれに尽きると思われる。これ一冊で内科系、外科系をカバーする非常に優れた本。下手にあれこれ手をだすくらいならこれ一冊を丸暗記しても良いくらい。
よくこういうマニュアル類に対して批判的なことをいう人がいるかも知れないけど、結局はまず手を動かしてなんぼのもんで、話はこれから。病態生理が書いていないなどはそんなん必要があれば他の本を読めばよいだけ。 これに救われことは非常に多い。
ただし、手技的なことはほとんど書いていないので適宜他の本を参照する必要があるのとあくまで救急・当直帯外来で来そうな疾患についての記載なので、入院患者さんすべてに当てはまるわけではない。
外来診療マニュアルは慢性疾患(糖尿病、高血圧など)を外来で見ていくときに必要な検査やフォローアップ、投薬について書かれている。検査って入院と違って頻繁にできないからなるべく一度で終わらせたい(自分のためにも患者さんのためにもw)。 なのでこれを見ながら穴がないように診療していくのがベスト。特に普段見ることが少ない疾患については特に念入りに。
# 内科系全般
・内科レジデントマニュアル、内科レジデント実践マニュアル、レジデント初期研修様資料内科ヒントブック
内科系のレジデントマニュアルを数冊読んでみたが、大体どれも書いてあることは似た様なこと。 でも似たようなことが書いてあることが重要なのだろう。個人的には実践マニュアルが見やすくて好き。こういう本は内容の質よりも「どこに何が書いてあるかがすぐ分かる」ことが重要。
・今日の治療指針
エビデンス、エビデンスと言っている人でも目の前の患者さんに対して「じゃあどうするの?」と言われたときに具体的な処方まで書いてある本書は非常に有用。個人的には初期研修の間はエビデンスなんてあまり考えなくても良いと思う。百歩譲っても最初の1年はエビデンスの重要性を説かれても必要性が分からないと思う。
# ステップビヨンドレジデント
ホントか?と思うような内容もあるけれどもいわゆるスタンダードと言われているような治療をする上ではやはり必須なのだろう。一度読んだけど、後で読み返すと「ああなるほど」と思うことが多い。
# 外傷関係
1. 手・足・腰診療スキルアップ or カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫
2. 夏井先生の外傷・熱傷マニュアル
3. 確実に身につく!縫合・局所麻酔―創に応じた適切な縫合法の選択と手技のコツ
なんか羊土社の回し者みたいだけど、仕方ない。羊土社はかなり研修医の要望を汲んだ、結構いい本出しているんだもの。外傷関係のレントゲンの読み方なんかはステップビヨンドレジデントに詳しいけれど、じゃあ実際にどうやって縫うの?糸や針の選び方は?となると、3や2の方が役に立つ。2, 3は実際に診療をしなくても読みやすいはず。実際のレントゲン写真や処置の仕方は1が良い。1の前者も後者もかなり有名で読みやすいと評判だが、実際に診療をしたことがない人は(そもそも整形外科自体が難しいので)多分読んでもなかなか実感がわかないはず。とりあえず見よう見まねでやってみてそれから本を読むのがある意味正しい姿勢かもしれない。
# エコー関連
心エコー:
必ず撮れる!心エコー―カラー写真とシェーマでみえる走査・描出・評価のポイント
持ち方から教えてくれる本。これを熟読して実際に患者さんにエコーをあてまくったらだいぶ描出できるようになった。ただ、エコーの機械は機種によって多少異なるのでそこらへんは普段使っている先生や技士さんに確認すべし。
腹部エコー:腹部エコーは個人的にはあまりいい本はない。
# 麻酔科
麻酔科は
麻酔科研修チェックノートの一択。ほぼ悩む必要がない。別にそこまでいい本だとは思わないけれども、研修医が知りたいようなことが基本的にすべて網羅されていると言っても過言ではない。他にいい本がないためにこの本の一択になる。他にも「臨床の書」とか「麻酔科研修の素朴な疑問に答えます」とかあるがあれは完全に読み物。別に読み物が悪いわけじゃないけれども、「今すぐどうにかする本がほしい!」という要望には答えていないと思う。
#
精神科
・
内科医のための精神症状の見方と対応
精神科と言っても実際に精神科の患者さんを「精神科として」診ることはほとんど無い。でも内科に紛れ込んで?やってきたり、手を切って救急車でやってくることも少なくない。また一見精神科疾患に見えて実は…ということもままある(そうでないことのほうが多いけれど)。別疾患で入院中の患者さんでなぜか抗精神病薬を飲んでいる人もいる。
精神科は難しいし自分でも正直良く分からない。でもそれでも何とかなっているのは結局のところ「
器質的疾患でなければ最悪眠ってもらってその後ゆっくり考える」という方法を取ることができる。ただ、初動でこの「器質的疾患」を除外できなかったらかなり手痛い。
この本は器質的疾患(脳血管障害や甲状腺機能低下症など)を鑑別するだけではなく抗うつ薬の使い方なども例示してくれる(リフレックスなどの新しい薬は載っていないけれども)。もっとも著者は精神科疾患は(軽症のうつ病も含めて)本来は精神科医が診るのがベストだという。
# 採血・CV等の手技関連
1. カラー写真でよくわかる!注射・採血法適切な進め方と安全管理のポイント
2. 必ず上手くなる!中心静脈穿刺部位別穿刺法のコツと合併症回避のポイント
1は要らないかもしれないけれど(採血・末梢ルート確保はコツはちょびっと後は経験)、2は結構コツも重要。もちろんどちらも教えてもらわないと出来るようにはならないけれども、基本的なところは本で読んでおきたい。
自分がCVを取っていた時はブラインドでやっていたけれども、今ではエコーを使うのが主流?となっているみたい。ただエコーを触ったことがないようだと、2つ血管が見えてどっちが動脈でどっちが静脈かわからないこともあるのでやっぱり勉強が必要(ドプラーをかけるか強く押して潰せばわかるんだけど)。