2013年1月20日日曜日

Problem solving.

#1 Let's start problem solving.
細胞診の問題集を少し解いてみる。そしてその後ちょっと飽きたので大学入試の数学の問題を解いてみる。

東大、京大レベルはさすがにかなわないけど、地方の国公立大学レベルなら、比較的余裕で解ける。計算ミスはまぁ感を取り戻すまで、ということで。

東進が過去問を公開しているので(無料で登録さえすれば)いつでもほぼ全ての問題を見ることができる。赤本いらないわと。

#2 Life is like problem solving.
人生とは問題を解くことだ、と言ってみる。これは特に大学生くらいには当てはまると思う。そこを過ぎるとみんな「もう問題なんてうんざりだ」と思ってしまうけれど、目の前に提示されるとつい鉛筆を走らせてしまう。

形は違えど、目の前にある問題に対処するというのは多分変わらないのだろう。○と×だけじゃないちょっと複雑な世界だけど。

でもその複雑でどちらか言い切れない状態が、かえって心地よいこともある。

とりあえず急性腸炎でいいじゃないか、虫垂炎でなければ。インフルエンザでいいじゃないか、肺炎でなければ(老人はたまに合併するから要注意しておかないといけいないけど)。

#3 What is the answer?
人生の答えは多分すぐには出てこないことが多くて、ある程度年齢を経てから出るものだろう。もしくは最後に死ぬときに出るのかもしれない。

#4 How is it solved?
答えも様々であれば解き方も様々。あまり偏屈にならぬようストレートな解法を心がけているつもり。

2013年1月16日水曜日

Pathology and Information Technology

#1 Can they have good relationship?

上司たちが勧めるので「地域医療と情報技術のマッチングワークショップ」に参加してみた。東大と産総研の人たちがITをベースにした自分たちのやっている研究と実地医療を行っている我々とのワークショップ(というなの講演会)。

いくつかのclusterに分かれた講演群。結論としてはまぁまぁ面白かったけどまだまだ自分にもやれそうな視点がいくつかあった。

#2 Natural language processing and medical record.

自然言語処理は特に日本語においては難しいと思う。主語がなくて、形容詞の係り方もいまいち分からない。Nativeとしての自分でもいったい何が言いたいのか分からないときもあるから(≒ this blog)。
  1. 医療記録に対して自然言語処理を用いて臨床経過をチャート形式にする、という研究
  2. 医療記録からキーワードを抽出して疾患との関連性(おそらく将来的には鑑別診断の提示などを考えているのだろう)を探るための基盤を作る研究。
  3. 医師の診療をサポートする様なプログラム、一言で言えば今日の診療プレミアム+αのようなものを作成する研究(商売)
以下感想。
1, 2. 医療記録というのは実際に書いている我々からすると非常に曖昧で、ある医師の書かれた文書が他者にとって了解不能ということはまま見られる。それからすると自然言語処理を用いたアプローチで採取できる情報というのは極めて限定的だと思われる。さらに「咳がある」と「咳がない」というのは雲泥の差があるくらい違う。その点を厳密に区別できる様にしておかないとデータの価値はぐっと下がる。
 もっというと医者の記録なんて医者のバイアスがかかった情報になる。それはそれで有用な所見だけれども、患者さんの問診の様なものを対象にするとakinatorのようなものに応用できたりするのでscreeningとしても便利かもしれない。

3. いろいろ説明があったけれども、要するに今日の治療指針のネット版。もしくはuptodateを日本語版にしてもっと実地診療ベースに落としたもの。発想は悪くないしいいんだけど、こういうツールで必要なものは何よりも電子カルテに付随していること。同じ画面で参照できること。すぐに参照できること。これがすべてな気がする。インターネットに接続しないといけないとか別の端末が必要だ、となると手元の本や他のツールと同じレベルになってしまう。エルゼビアジャパンの人はその点を重視した方が良いと思う。

#3 Utilizing medical records.
医療記録を個人情報ととらえて、個人情報を個人が管理していく時代でその時代においてどのように医療記録を活用できるかという話。

以下感想。
言っていることがよく分からない。結局は自分が無知なだけかもしれないけれど、あまりピンとこない。医療記録を本人管理にすると病院はデータ保管のコストやリスクから解放されるとするが、預金通帳なんかと一緒で病院側にも必ずバックアップが要求される。受診したときに前医分のデータも一緒に提供されたらその分保管データが増大する。医療記録を医療機関の間で共有することはすごく重要なことだとは思うけれど、それがコスト削減に結びつくかは微妙。

あと病院を利用する層の多くは老人で認知症の人も結構いる。そういう人たちにデータを管理させるのは難しいし「家でなくした」とか言われるとぞっとする。EvernoteやDropboxに置いておけばいいというが、それって全体的に見てコスト削減になるの?商用ベースのstorageは基本的にユーザーのバックアップが必要となる。認知症の患者さんにそれを要求するのは難しいから結果的に医療機関はデータを保管する必要があると思う。

データ漏洩の問題で集中管理にしていたら何百万人のデータが流出してしまうが、個人管理にすれば一人分ですむと言う。でも何百万人のデータは各個人にとっては限定的なデータ(商品の購入と住所、年齢、氏名、性別程度)だけど、一人流出したものはその人に関する全てが入っている。そのデータはおそらく悪意がある人からすればその人を社会的に抹殺することだって可能。それにEvernoteやDropboxから流出してしまえば一人では済まない様な気がする。企業的にはリスクは減るかもしれないが、ユーザーの利益になるかどうかは微妙。

医療記録を個人が主導で管理する時代はいずれやってくると思うけれども、今回の話は自分が予想するあるべき方向性とは少しズレている様な気がした。

#4 Pathology and IT
病理診断とITの活用。「色」の情報を認識して病理診断に生かすとのこと。

病理画像(に限らずかもだけど)を画像解析するときに構造の情報と色の情報から判断するとのこと。今回は色の情報からのアプローチ。

直感的には何となく分かる。今回の話を一言で言うならば「クロマチンが濃ければ癌でしょw」というようなもの。それを真面目にアプローチしていた。

色という観点で画像から様々な情報を抽出してそれと病理医が行った診断を比較して学習させる。多変量解析モデルを作成する、ということになるのだろう。

消化管生検レベルではかなり実用的になっているとのこと。問題は偽陰性になるが、結局「検査」というのは偽陽性・偽陰性からは逃れられない運命になっているので、この程度なら十分実地活用が出来るなぁと感心した。ただ、この精度というのはあくまで検討サンプル内であって過剰適合している可能性もある。

あと胃生検で出来たモデルは微修正をしながら腸生検や他に適応可能だとのこと。また学習サンプルが多いものでないと、教えようがないとのこと。

人間の代わりになるためにはもう少しinnovationが必要そうだ。

2013年1月6日日曜日

New year.

#1 Keep on.
昔(今も?)やっている遠山顕の英会話入門で最後に言われる言葉。確かKeep on smilingで締めくくられたような気がする。

継続は力なりとはまさにそのこと。進歩がないように見えても、一歩一歩進んでいくことは大切なのだろう。

今年の目標を考えてみる。まずは病理診断から。

a. Diagnostic cytopathology
b. Electron microscopy
c. Brush up diagnostic surgical pathology

病理診断の道のりは結構険しくてなかなか一筋縄ではいかなそう。とりあえず今年はdiagnostic cytopathologyを中心に、電顕の勉強もすることに。

次に一般診療。そろそろ卒後5年目になる。トレーニングする環境下にはない自分が目指すべき道は必然的に総合診療 or 救急ということになる。だいぶ診療は落ち着いてきたが、これを悪く言えば我流になろうとしているということ。端的に言って今の自分に足りないのは身体診察とEBMへの深い理解。

はっきり言って身体診察はいらない、というと語弊があるが、多くの場合はCTや血液検査にかなうものではない。身体診察でしか診断できないものを考えると実際の有用性はかなり低い、と思う。

ただ、まぁ「網羅的」で見逃しを限りなくゼロにするためには、文字通り頭から足の爪先までくまなく検索する必要がある。

今年は身体所見を重視して診療をしていこうと思う。

#2 Catch the future.
大好きだった3B LABのブログを久しぶりに見たら
沢山の人達に見てもらう時代は終わり、皆が好んで選び、音楽、映画や商品を選択する時代がやってきました。
僕は将来の展望をそう見ます。
と書いてあって、facebookに移行していた。この人は音楽の才能ももちろんだが、世の中を冷静に見る力がすごくあると思う。リーマン・ショックも変な勘?で切り抜けているし。

基本的には岡平健治に同意。インターネットの普及によって情報が氾濫していき、流れる情報を全て採取することが実質不可能になっている。その中で消費者は自ら選んでいく、いや正確に言うとそうせざるを得ない時代になっている。選択というコストが発生するという意味で有利というかむしろ不利になっていると思う。提供する側も同様で取捨選択される割合が増える以上、コストをかけただけの反応が必ずしも来るわけではない。不特定多数をターゲットにした広告(テレビCM等)のコストパフォーマンスは非常に悪くなっている。

なので彼も不特定多数の人に語りかけるよりも自分のことを支持してくれている人に対して語りかけたほうがコストも少なくて済み利益も多いと判断したのだろう。最もそれができるのは、「沢山の人達に見てもらう時代」を最大限に活用できた彼だからこそとも言える。それに加えて全国の弾き語りツアーをすることで共感してくれる人たちの心を繋ぎ止めているのだろう。

裏を返すともう彼は弾き語りツアーを辞めることはできない、時代が変わるまでは。

ちなみにももいろクローバーZも成り立ちからして似ている。ただ、彼女たちはlocalから始まり全国区のアイドルを目指そうとしているようだけど、他のアーティスト同様真価を問われるのは(この先何十年と生きられるかは)これからだろう。もっというとアイドル(特に女性アイドル)は寿命が短いので女優なりに方向転換を迫られるだろう。

#3 Medicine in the future
日本はアメリカを追いかけていると言われてる。この先10年くらいは医療の世界でも訴訟が頻繁に起こされてくるだろう。皆保険制度も崩壊するかもしれない。

(崩壊は絶対にしないけど、混合診療解禁など「実質的な崩壊」は十分予想される)

個人的な予想ではその後は寄り戻しが起こる。結局人間は死ぬ。例えて言えば結局今の医療(本質的にはこれからの医療)はハンググライダーのようなもの(やったことないけど)。風向きで少し上向きになったりするけど、最終的には落ちて地面につく。長距離を滑走することもできれば、短距離ですぐ落ちる人もいる。医療の限界が認識され、医療に対する見方が変わってかなり冷めたように見るかもしれない。

今はそのことに気づいていない患者さんが多くて、医療にすごく多くの可能性を求める。今の医療水準はその要求をかなりの割合で応えていると思うけど、できることが多くなった反面、できないことがすごく鮮明に映し出される。iPS細胞はすごいけれども、その恩恵を受ける人は抗生剤で恩恵を受ける人からするとぐっと少ない。

#4 And...
この先新しいことに飛びつく人が多いと思う。それはそれで重要。だけど、基本的には二番煎じには勝ち目はない。それよりも伝統工芸的な少し古いけど、技術的には安定したものを充実させていくほうが、この先10年、20年を見た時に有利ではないかと考える。

その時に選択肢となりうるのが実地診療で言う総合診療。身体診察もCT, 血液検査が簡便に行われるようになったため軽んじられるけれど(実際比重は軽い)、でも裏を返せばCT, 血液検査では分からない情報が身体診察で分かる(もっと言うと情報価値が一番高いのは問診なのだけれども)。そういう情報収集能力はCTがあろうがなかろうが使える。古い技術ではあるけれど、EBMに基づいた新しい息が吹きこまれた(つつある)技術でもある。

病理診断においてはおそらく数十年後には生検レベルでは(もっと言うと胃・大腸生検レベルでは)コンピュータによる自動診断が採用されることだろう。現実もうそういう機械ができているとのこと(ヒューリスティックな画像処理と機械学習のアルゴリズムによると)。

生検で実績が重なれば、大腸癌、胃癌程度の比較的簡単な手術はもう実用化されると思う。具体的にどうやって?いつ?と言われても答えられないけど。

少なくとも10年前には将棋のソフトがプロと互角に勝負ができるようになんて誰しも思わなかったはず。だからありえなく無い話でもない。

ルールが明瞭な将棋とは違って、ルール自体があいまいな病理診断は基準となる指標が必要。それは少なくとも現時点では完全な明文化ができなくて、バラツキもある。病理診断のスキルはその時点で(どんなにコンピュータによる自動診断が主流になったとしても)最終的な判断という意味では残るだろう。

もっともそれももっと時代がすぎれば最終的に明文化されるかもしれない。もっともっというと、病理よりもより正確な検査法が発明され取って代わられるかもしれないけれど。。。