2013年1月16日水曜日

Pathology and Information Technology

#1 Can they have good relationship?

上司たちが勧めるので「地域医療と情報技術のマッチングワークショップ」に参加してみた。東大と産総研の人たちがITをベースにした自分たちのやっている研究と実地医療を行っている我々とのワークショップ(というなの講演会)。

いくつかのclusterに分かれた講演群。結論としてはまぁまぁ面白かったけどまだまだ自分にもやれそうな視点がいくつかあった。

#2 Natural language processing and medical record.

自然言語処理は特に日本語においては難しいと思う。主語がなくて、形容詞の係り方もいまいち分からない。Nativeとしての自分でもいったい何が言いたいのか分からないときもあるから(≒ this blog)。
  1. 医療記録に対して自然言語処理を用いて臨床経過をチャート形式にする、という研究
  2. 医療記録からキーワードを抽出して疾患との関連性(おそらく将来的には鑑別診断の提示などを考えているのだろう)を探るための基盤を作る研究。
  3. 医師の診療をサポートする様なプログラム、一言で言えば今日の診療プレミアム+αのようなものを作成する研究(商売)
以下感想。
1, 2. 医療記録というのは実際に書いている我々からすると非常に曖昧で、ある医師の書かれた文書が他者にとって了解不能ということはまま見られる。それからすると自然言語処理を用いたアプローチで採取できる情報というのは極めて限定的だと思われる。さらに「咳がある」と「咳がない」というのは雲泥の差があるくらい違う。その点を厳密に区別できる様にしておかないとデータの価値はぐっと下がる。
 もっというと医者の記録なんて医者のバイアスがかかった情報になる。それはそれで有用な所見だけれども、患者さんの問診の様なものを対象にするとakinatorのようなものに応用できたりするのでscreeningとしても便利かもしれない。

3. いろいろ説明があったけれども、要するに今日の治療指針のネット版。もしくはuptodateを日本語版にしてもっと実地診療ベースに落としたもの。発想は悪くないしいいんだけど、こういうツールで必要なものは何よりも電子カルテに付随していること。同じ画面で参照できること。すぐに参照できること。これがすべてな気がする。インターネットに接続しないといけないとか別の端末が必要だ、となると手元の本や他のツールと同じレベルになってしまう。エルゼビアジャパンの人はその点を重視した方が良いと思う。

#3 Utilizing medical records.
医療記録を個人情報ととらえて、個人情報を個人が管理していく時代でその時代においてどのように医療記録を活用できるかという話。

以下感想。
言っていることがよく分からない。結局は自分が無知なだけかもしれないけれど、あまりピンとこない。医療記録を本人管理にすると病院はデータ保管のコストやリスクから解放されるとするが、預金通帳なんかと一緒で病院側にも必ずバックアップが要求される。受診したときに前医分のデータも一緒に提供されたらその分保管データが増大する。医療記録を医療機関の間で共有することはすごく重要なことだとは思うけれど、それがコスト削減に結びつくかは微妙。

あと病院を利用する層の多くは老人で認知症の人も結構いる。そういう人たちにデータを管理させるのは難しいし「家でなくした」とか言われるとぞっとする。EvernoteやDropboxに置いておけばいいというが、それって全体的に見てコスト削減になるの?商用ベースのstorageは基本的にユーザーのバックアップが必要となる。認知症の患者さんにそれを要求するのは難しいから結果的に医療機関はデータを保管する必要があると思う。

データ漏洩の問題で集中管理にしていたら何百万人のデータが流出してしまうが、個人管理にすれば一人分ですむと言う。でも何百万人のデータは各個人にとっては限定的なデータ(商品の購入と住所、年齢、氏名、性別程度)だけど、一人流出したものはその人に関する全てが入っている。そのデータはおそらく悪意がある人からすればその人を社会的に抹殺することだって可能。それにEvernoteやDropboxから流出してしまえば一人では済まない様な気がする。企業的にはリスクは減るかもしれないが、ユーザーの利益になるかどうかは微妙。

医療記録を個人が主導で管理する時代はいずれやってくると思うけれども、今回の話は自分が予想するあるべき方向性とは少しズレている様な気がした。

#4 Pathology and IT
病理診断とITの活用。「色」の情報を認識して病理診断に生かすとのこと。

病理画像(に限らずかもだけど)を画像解析するときに構造の情報と色の情報から判断するとのこと。今回は色の情報からのアプローチ。

直感的には何となく分かる。今回の話を一言で言うならば「クロマチンが濃ければ癌でしょw」というようなもの。それを真面目にアプローチしていた。

色という観点で画像から様々な情報を抽出してそれと病理医が行った診断を比較して学習させる。多変量解析モデルを作成する、ということになるのだろう。

消化管生検レベルではかなり実用的になっているとのこと。問題は偽陰性になるが、結局「検査」というのは偽陽性・偽陰性からは逃れられない運命になっているので、この程度なら十分実地活用が出来るなぁと感心した。ただ、この精度というのはあくまで検討サンプル内であって過剰適合している可能性もある。

あと胃生検で出来たモデルは微修正をしながら腸生検や他に適応可能だとのこと。また学習サンプルが多いものでないと、教えようがないとのこと。

人間の代わりになるためにはもう少しinnovationが必要そうだ。

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