2012年4月14日土曜日

Clinical practice 8

ちょっとした勉強になった症例。

Case 60歳代男性
狭心症、高血圧、糖尿病の既往あり無治療。ここ最近忙しくて風邪気味だった。就眠中に目が覚めると突然ぐるぐる回るめまいとそれに伴う嘔気が起こり救急搬送。

#1 めまいの鑑別
vertigo vs dizziness vs blackoutというのはかなり有名な鑑別。「そういう鑑別法では100%区別するのは出来ないよ」という人もいる。確かに患者さんの訴えなんて必ずしも正しいとは限らない。

それでも可能であれば上記の鑑別をするのは意義があると個人的には思っている(間違っていれば途中からやり直せばよいだけのこと)。

vertigoは周囲がぐるぐる回るような回転性のめまい、dizzinessはフワフワしたりゆらゆら揺れたりする浮遊性のめまい、blackoutは意識が遠のくような血の気が引くようなめまい。めまいという言葉の中には一般的にはこの3つの意味が含まれていると言われている。

もちろんvocabularyの細かい定義は使う本人によって異なり頭がモヤモヤしているだけでもめまいという人がいるかもしれない。だから詳細な問診をして性状を明らかにする必要がある。

#2 Clnical course
来院時、意識清明、vital著変なし。やや右への眼振を認めた。四肢麻痺なし、構音障害、嚥下障害なし。難聴耳鳴なし。念のためECG, 血液検査で心筋梗塞は否定した。

臥位でじっとしていたら大丈夫だけど、起き上がろうとしたら無理みたいだった。頭位変換性(頭を動かすとめまいはひどくなるかとの)問いに対してよくわからないと。

メイロン 40ml iv, プリンペラン iv, あまりに症状が強いのでホリゾン ivした。ちょっとは症状は軽くなったが、まだ嘔気が続いていた。

#3 Always rule out cerebellar stroke
脳梗塞は常に否定する必要がある。メイロンでよくなったらいいかと思ったけど、収まらないのでMRIを撮影。拡散強調像で梗塞巣は見られず、脳梗塞は否定的と考えた(本当に違うかどうかは経過を追って見る必要がありそうだけど)。

ちなみにメイロンを打つのは今では邪道の部類に入る。主流はホリゾン、プリンペランの対処療法。結局この例は外来でキープし症状が改善したため帰宅。

#4 BPPV vs 前庭神経炎
今まで蝸牛症状(耳鳴難聴)を伴わない内耳性の回転性めまいは良性発作性頭位めまい症だけだと思っていたけど、何気なく本を開いたら前庭神経炎もその部類に入るらしい。

確かに1週間前くらいから風邪を引いていたみたいだから前庭神経炎がふさわしいのかもしれない。

ただしどっちも治療法は一緒(することがない、BPPVにEpley法はあるけど)で経過も似ている。

#5 よくわからない
たまに患者さんがこう答える。「胸は痛いですか?」「いやぁ、よく分かりません」と。こっちとしては痛いか痛くないかなのにどうして答えられないのかと思ってしまう。

印象としては話をするのが面倒なくらい(ぐったりした)状態や意思決定が苦手な(≒優柔不断な)人に多いような印象。

かもしくはこちらの聞き方が悪いのかもしれない。なるべく答えやすいような質問を心がけてはいるけど、患者さん自身が体験している状況とはずれたことを聞くとそうなるのかも。

今回の例で患者さんがよくわからないといったのは、おそらく「確かに頭を動かしたらめまいは起こりそうだけど、そうじゃなくて寝返りを打つくらいでもめまいが起こる。というかずっとめまいが続いているから、頭だけが原因かどうかなんてわからない」というニュアンスがあってだと思う。

また胸が痛いかどうかについても狭心痛と言われる胸部圧迫感を「胸痛」と思わない人もいて「胸が痛いか」という問に対しても「痛くはないけど、性状の状態では決してない。この踏まれたような何とも言えない違和感がある。どう表現して良いかわからない」という意味で「よく分かりません」というのだと思う。

だからよくわからないと言われた時の対処法としては「聞き方を変える、近い症状を聞いてみる(胸痛→胸部違和感、頭痛→頭が重たい感じ、チクチクする感じetc)時間を置いて再度聞いてみる」それでも要領を得ない場合はその質問を不明として次の質問へさっさと移ること。よくわからないことに時間をかけてもしょうがないので。

0 件のコメント: