2012年1月22日日曜日

Something risky

#Something risky.
リスク管理。大した話じゃないけど。

例えば病理診断であれば、悪性腫瘍と良性疾患を区別することが重要。「良性→悪性」と誤診するのと「悪性→良性」と誤診するものは、(どっちも悪いんだろうけれど)一般的には「悪性→良性」と考えられている(確か)。

でも訴訟になりやすいのは「良性→悪性」で手術をしたら良性でした、というパターン。

「悪性→良性」の場合は言い訳が成立しやすい。たまたま取ってきたところに癌がなかった、検体上はmargin negativeだったが、微小に露出していたのかもしれない、など。

でもその逆は言い訳のしようがない。

#A patient who is concerned about his health, but he doesn't want to consult me.
こういう症例があった。

若い男性で胸が痛いから調べて欲しいと。よくよく聞くと月1回くらい起こっていて、自然と治まる(疼痛の間もADL低下はあまりなさそう)。痛い部位は確かに心臓にかぶるようにも見えるし肋骨のようにも見える(もしくは肋軟骨部?)。

もっとよく聞くと、親戚の伯父さんが健康診断で問題ないと言われたの心筋梗塞になったと。自分も健診を受けてはいるが心配でならないと。

若年男性の胸痛と言ったら気胸、大動脈解離、肋骨骨折、肺炎、帯状疱疹くらいか。若年女性なら気胸と併せて内膜症があるか。外表面上は発疹はなく、episodeからするとどれもしっくり来ない。

ただAMIを心配してきたんだろうと解釈し胸写、採血、心電図をとって異常ありませんよ~と言ったらすごい剣幕で言ってきた。

「心筋梗塞だとは思っていません。この胸の痛みがなんなのか調べて欲しいんです!!!」

たしかに大変かもしれないが、少なくともバイタルは崩れていない、胸写、採血、心電図で異常がない、発作の起こり方からしても緊急性はないと判断できる。原因ははっきりしないが、心因性のことも考えられる。気分を鎮めるような薬が効くかもしれない。というと

「不安だからとかじゃないんです!胸が痛いんです!」

と強くいう。そして

「インターネットで調べたら呼吸器内科がいいって書いてあったんです。本当は呼吸器内科に行きたかったんですが、近くになくてここに来ました」

とおっしゃる。まぁ心配なら胸部CTくらいとっても良いかなと思っていたけど、本人が呼吸器内科に行きたいのであれば、そりゃあ行ったほうがよい。というわけで直ちに紹介状を作成した。「本人が強く希望されております。御高診よろしくお願いします」と。

#Assess the risk.
この症例は結局良くわからなかったが、多分心因性だと思う。胸写くらいだけど、少なくとも器質的疾患は考えにくいし、経過も狭心症らしくない(そもそも高コレステロール血症などの家族歴がない)。
不自然に感じたのが、「気分が優れないことで痛みが出てくることもあるかもしれません」というとそれに対して強く反抗する。「自分はそうじゃない」と。

その時点で(はっきりとした病名はわからないけど)心因的なものを強く疑った。もちろん実は…だった、ということは稀ながら経験するので決め付けるのは良くないんだけれど。

いずれにせよ、強い口調、自分の発言を100%否定し、インターネットの言うことを信じている態度から(それを面と向かって言われているわけで)、自分はこの患者さんからは信用されていなくて(どうせ一般内科で専門医じゃないし…)、自分でキープしていても信頼関係の構築をするのは難しいと判断し紹介した。まあ個人的には「呼吸器内科」の疾患かといわれれば微妙だけど、本人が信じて疑わないので「本人希望」の紹介。

#Patients want professionals.
自分が(一応看板は一般内科だけど)一般内科や総合内科、家庭医療、総合診療といったものの専門家という発想にいまいち賛同できないのが、患者さんからの評価。

一般内科は簡単な病気を扱っていて専門家は難しい病気を扱っている。

というイメージがある。必ずしもそうではないんだけれども(病院によっては病気を複数抱えている患者さんの主治医になったりするところもある)、でも全体的に見ればやっぱりその通りっていう状況が多い印象(あとはどうしようもない敗戦処理だったり?)。

だから三重のとある先生は総合内科は最初から目指すべきものではなくてある程度専門をやってそこから転向を考えても十分という。

アメリカの家庭医療の専門家とはかなりかけ離れている(自分でお産を見たり乳児検診をしたりする総合内科医が日本にはいるのか?)。

#Always minimize the risk.
診療を続ける限り、極端なことを言うと生きている限りは常に何らかのリスクを伴う。ただ、それは心がけ次第で低くすることができる。

だから「●●科はリスクが少ないですよー」とか「▲▲科は高リスクだから止めといたほうがいい」というのはあまり信用していない。まあ多少はあるだろうけど。

(入って「ここはリスク高いんだよねぇ」と言われても同反応したらよいか困るはず)

整形外科は死なないけど、機能障害が起こったらそれこそ一生もの。救急は何が来るか分からない病気に対して100%の診療が求められるから、結果いかんでは訴訟になりやすいけど、ガイドラインを作って、ここまで検索して見逃したら仕方ない、というルールを作れば訴訟を回避しやすい。

結局あの人はどうなったのだろう。もうずいぶん経つけど。

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