2011年10月10日月曜日

Medical Practice 3.

というわけで読者はいないけれど第三弾。


#痙攣を起こした
・70歳くらいの入院患者。脳梗塞後、糖尿病、高血圧で入院中。もともとJCS III桁程度の意識がほとんど無い。突然右上下肢の痙攣が起こったということでCallあった。


・痙攣の原因
この症例では痙攣の原因は複数考えられる。脳梗塞後の症候性てんかん、低血糖発作、他にも脳出血だったり(脳梗塞後の人は抗血小板剤や抗凝固剤を内服していることが多いので)電解質異常、抗てんかん薬の服薬compliance不良だったり数えてみればきりがない。

この症例ではすぐに血糖を測定し低血糖は否定された。夜間だったため検査が出来なかったがここ最近の検査値を見ても電解質異常は否定的、再梗塞や出血は否定できてはいない。バイタルサインは発熱はなく、SpO2が95%(room air)→80%程度(room air)に下がっていた。喉がゴロゴロしているように見えた。抗てんかん薬の服薬なし。

・痙攣への対処
続いている痙攣は止める必要あり。大体の順番としてはホリゾン(セルシン) 1A→駄目ならホリゾン更に追加→駄目ならアレビアチン、フェノバール→更に駄目ならドルミカム→さらにさらに駄目なら挿管してマスキュレートということになる(用量や順番は多少変化する)。

この例ではホリゾン 1Aでもだめでもう1A ivして何とか収まった。今回は2回目で前回も同じようにして止まった。


・SpO2低下は続いた
痙攣止まったから良かった良かった、これならちゃんと呼吸できるでしょwと思っていたらSpO2は上がらない。あれ?と思っていて胸の音を聞いたけれど、ちょっと呼吸音が小さいけれど、左右差はないし、中枢性の気道狭窄音は聞こえなかった。

呼吸抑制かな?と思って10Lアンビューで押してみたけれど変わらない。なんでだろう?胃には入ってなさそうだし、胸郭も動いてみて普通に呼吸しているように見えた。

さっき痰がゴロゴロしていたので試しに吸引をすると結構粘り気のある痰が引けた。なかなか痰が引きづらかったのでネブライザーをかけつつ痰を引いて何とか引いたらSpO2は劇的に改善した。

劇的にというのはもともと痙攣前はO2 3L nasalで行っていたのが1Lで良くなったこと。まあもともと自分が見ているわけではないし、これからはまた主治医にお願いするわけであれだけど。


・低酸素血症か?
一応脳梗塞後だから症候性てんかんということになるが、個人的には脳梗塞→嚥下障害(喀痰の排出障害)→痰詰まりの窒息→低酸素血症→けいれんという経路が考えられるでは?と思ってみた。

そうなのかどうかはこれから痰を頻繁に吸引してみないと何ともいえないけれども。


#2 熱が高い
・80歳くらいの女性。高熱(39.5度)が出たということ指示をもらうためCall.

・熱の原因は?
本当はfocusを一生懸命探さなくちゃいけないんだけれども、まあ当直だし、、、とりあえず2週間前に同じように熱が出てその時は何もせずに翌日に熱が下がった。そしてその時に血液培養を提出していてS. aureusが出ていたこと。

2週間前が敗血症であったのなら1日で解熱するのはおかしい。菌血症の状態ではなかったのか?と想像するがいまいちはっきりしない。

診察上も特に問題なし。身体が熱い以外に優位な所見を認めない。


・治療はどうする?
食事がほとんどとれていないこと、また高熱で脱水をきたしやすいことから輸液を開始。またクーリングをしながら下熱をするために下熱剤を使用した。これまでの経過から現時点では感染症(特に細菌感染症)を疑う所見に乏しいと考えそのまま経過観察。

下熱剤はアセトアミノフェンの坐薬を指示したが病棟にはなかったのでジクロフェナク25mg PAとした。

http://kekimura.blog.so-net.ne.jp/2009-01-05

のブログによれば、下熱でNSAIDsを高齢者に使うと血圧が下がりすぎるし身体の反応を止めようとしていることになるから止めようという。確かに高齢者にNSAIDsを使ってあれれと血圧が下がった症例をしばしば経験するが、それは痛み止めとして使用していたとしても同じこと。

だったら高齢者にNSAIDsを禁忌とすると変形性関節症の人たちのロキソニンがなくなってしまう。

結局病院なのでちょっと定期的に血圧を測っておく、輸液を行う、ベッドから落ちないようになどでだいたいなんとかなると思う。

まあ原因疾患を同定するのが先なんだけど。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

S.Aureusなら真の菌血症だから治療対象だよ。IE、化膿性脊椎炎、硬膜外膿瘍はr/oすべし。

hirokickman さんのコメント...

当直先の病院だからねぇ(向こうの内科医的には感染はないのでは?というスタンスみたい)。
http://blog.livedoor.jp/lukenorioom/lite/archives/51438409.html
コンタミの可能性も否定は出来ない。

確かに調べてみれば菌血症の時点で治療になるみたいね(期間などは多少異論があるにせよ)。

化膿性脊椎炎や硬膜外膿瘍は症状からやや考えにくいけど感染性心内膜炎は十分にあるかも。ただ臨床経過(2週間の無症状)も含めるといずれも断定できない。心雑音はあったような気がしたが高齢者だからなんとも。

確かこの例ではバイタルは高熱以外は安定、すぐに解熱はしたみたいなので当直としてはまあこれくらいが限度。不明で菌血症と同定しにくい状況、しかも夜中でまずどう動くかというのが趣旨。多少の不備はご勘弁を。